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成長フレームワークPSHEを活用して技術広報のキャリアを考察!

はじめに

自分の役割や職種、キャリアは特殊であり、過去にあまり前例が無い。そのためどうやって成長し成果を出し、キャリアを積み重ねていけば良いのか分からない。そんな事を考えた事はありませんか?例えば昨今増えてきている「技術広報」という職種でも、どのようにキャリアを積み重ねていいか悩みを持つ方は多いです。

この記事ではキャリアの設計について、PSHE という成長のフレームワークを紹介しつつ、具体的に「技術広報」という職種に当てはめながらご紹介します。

※ この記事は技術広報AdventCalendar Series2 Day24 かつ ジンジニアAdventCalendar Day24 の記事です!

※ この記事の作者は、2018年から技術広報を6年ほど担当し、2023年から人事の責任者を担当しています。その業務で得た経験を事例としてお話します。

PSHE フレームワークとは

PSHEとは、Problem(問題)、Solution(解決策)、How(方法)、Execution(実行) の頭文字をとったもので、社員の成長を評価する指標を4つに分けてまとめたフレームワークです。このフレームワークはShishir Mehrotra 氏が Google で導入したものです。

※ 参考: Lessons for Product Leaders | Shishir Mehrotra, Co-Founder & CEO - Coda | The Product Folks

PSHE フレームワーク

PSHE フレームワーク

レベル1:実行 (Execution) に重点を置く段階

キャリアの初期段階では、上司から解くべき問題(Problem)、問題の解決策(Solution)、具体的に実行する方法(How)を与えられ、その与えられた条件の中でタスクを実行(Execution)することに集中します。この段階では、主に担当範囲(SCOPE)を広げることで成長します。

技術広報に例えると、CTOやVPoE、人事などから「技術広報をやってくれないか」と頼まれたばかりの段階がこちらに当てはまります。この段階ではCTOやVPoEから「このエンジニアブログを運営してください」「この技術カンファレンスのスポンサーをとりまとめてください」と具体的な指示を受け、技術広報となったメンバーはそれぞれを実行(Execution)していきます。

実際にやってみないことには、エンジニアブログの裏側で運営がどういった仕事をすべきなのか、カンファレンスのスポンサーや、勉強会の運営でどういった仕事ややりとりがあるのか、知ることさえ出来ません。それぞれ実行(Execution)の質を高く保ちながら、確実にやり切ることが求められます。

レベル2:方法 (How) を考える段階

ある程度経験を積むと、上司から解くべき問題(Problem)と解決策(Solution)は与えられますが、それを達成するための具体的な方法(How)を考える必要が出てきます。具体的な方法を確実に実現するためのスケジュールの設定、必要な打ち合わせを構成し、適切な作業手順などを決定し、効率的にタスクを実行(Execution)できるよう、方法(How)を改善していきます。

技術広報に例えると、「エンジニアブログでもっと多くの記事を発信してもらうための運営方法」「技術カンファレンスでより参加者の印象に残る企画を運営する方法」などを考え、計画を立てます。他社が実施している技術広報の方法(How)などを参考にして、担当範囲(SCOPE)を広げていけるのもこの段階です。

以下、参考までに筆者がこの段階で書いた記事などを共有します。

レベル3:解決策 (Solution) を見つける段階

さらに上級レベルになると、解決すべき問題(Problem)は与えられますが、どのような解決策(Solution)が最適かを自分で考え、提案する役割を担います。この場合の解決策(Solution)は「戦略」と読み替えることもできるでしょう。この段階では、どのターゲットを狙っていくのか市場を選定したり、複数の解決策(Solution)を検討するなど、より戦略的な思考が求められます。

技術広報に例えると、日本のソフトウェアエンジニア市場を分析したうえで「高い技術ブランディングを築き上げるための戦略」を立案し、実行していく段階です。1つ1つの技術広報の方法(How)がバラバラに行われるのではなく、戦略的に決めたGoalを目指して一貫性を持った方法(How)が実施されるため、相乗効果で大きなインパクトを残すことが出来ます。

以下、参考までに筆者がこの段階で書いた記事などを共有します。

 

レベル4:問題 (Problem) を発見する段階

最上級レベルでは、社内外周囲の状況を観察した上で、解決すべき問題(Problem)を自ら発見します。そして、その問題(Problem)に対する解決策(Solution)も提案し、実行することで、社内外の組織に大きな影響を与えます。

技術広報に例えると、そもそもなんで技術広報をやりたかったのか、解決したい課題(Problem)が何だったのかを見直します。もとは「採用でエンジニアのリファラルが少ない」という課題だけを対象としていたが今年は採用をストップしているようなケースでは、「採用に限らずエンジニアに自社を選んでほしいが選ばれない」や「勉強会やカンファレンスに自社エンジニアが行かず最新情報を得られていない」など、社内に埋もれている別の課題の切り口を見つけ、新しい解決策(solution)のアイデアを提案します。

先日、とある企業のVPoEと話したときに「ウチではエンジニアの研修費も兼ねて、技術カンファレンスのブース出展しています。出展で自社の様々なプロダクトを人に説明する経験がとても大事なのです」という話を聞きました。「自社エンジニアが自社プロダクトのドメイン知識を十分に理解できていない」という課題の解決に取り組んでおり、そんなやり方もあるのか!と驚きました。

 

幻滅の谷間

幻滅の谷間

幻滅の谷間

Mehrotra氏は、2番目の「方法 (How) を考える段階」を 「幻滅の谷間」 と呼んでいます。

キャリアの初期段階では、業務の担当範囲(SCOPE)の拡大が目に見える形で成長を実感できます。しかし、「方法 (How) を考える段階」になると、成長の指標が「仕事のやり方」に移行します。この変化に気づかず、以前と同じように担当範囲の拡大のみを目標にすると、成長を実感できず、モチベーションが低下する可能性があります。

技術広報に例えると、エンジニアブログや技術カンファレンスのスポンサーなど、色々と実行(Execution)の担当業務範囲(SCOPE)を広げ、それぞれの方法(How)に独自の工夫や改善も行っていく。その工夫や改善も評価されるが、次にどういったことをしていけばキャリアを積み重ねていけるか、分かりやすく教えてくれる人はいない。という落とし穴です。そういった状況に心当たりがある方は、ぜひ解決策(Solution)や問題(Problem)を見直し、より戦略的な技術広報に挑戦いただきたいです。

まとめ

キャリアの設計について技術広報という職種を具体例に PSHE というフレームワークをご紹介しました。この記事でキャリアに悩んでいる方のなにかのきっかけになることが出来たら幸いです。

このフレームワークは他の職種にも当てはめやすい考え方であると言われており、Shishir Mehrotra 氏が紹介している事例ではプロダクトマネージャー職を対象としていました。おそらく他の職種でも役立つ考え方だと思いますので、実際に当てはめて考えてみてください。

今回のPSHEフレームワークについては、以下の Software Design の記事でも紹介していますので、興味ある方はぜひお手にとっていただけると幸いです。

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